香の歴史
香が日本に初めてもたらされたのが538年。
百済より仏教が伝えれたこの年、仏教、経典とともに、海を渡って来たとされています。
四囲を浄め、一種荘厳世界を醸し出すものとして、仏事からやがては神事、宮中儀式の場にも重用されてきました。
この香りの基となる香木は、もともと熱帯、亜熱帯の植物で、日本には産せず、すべて渡来物に頼ってきました。
飛鳥、奈良、平安時代にあ、遣唐使など頻繁な往来により、香木もまたさかんに持ち込まれます。奈良 唐招提寺を創建された唐の鑑真和上も、その一人とされています。
以来、千年以上経った現代まで香りは私達の生活に深く結びついて発展してきました。
宗教儀式での香に続き、唐の長安で流行していた「薫物 たきもの」が、王朝人の暮らしに潤いを添えるようになります。
これは種々の香木を調合し、梅や蜜で練り固めたものを、室内や小袖などの衣類に焚き込める、実用と嗜みをかねた香。その愛でぶりは、源氏物語の梅ヶ枝の巻きにくわしく、独自の香りづくりにいそしむ平安人のしゃれ気を垣間見える想いがします。
この後、互いの香りを競い合う「薫物合 たきものあわせ」に変化し、やがて天然香木を以って行う「香合 こうあわせ」に展開していきます。この風雅な遊びは、後の香道の源になっていきました。
戦国の世になり、簡便で実用的な香りとしての線香の手法が、明人によって伝えられました。